小説みたいな恋をして
「愛してる。」
囁きながら耳朶を噛むと、腕の中の光紀は僅かに身を竦ませた。俯く顔を上向かせて、赤い唇に自らのそれを寄せる。
2度目のキスを交わしたのは寝室だった。クローゼットに囲まれた部屋の主役は勿論どっしりとした造りのダブルベッドで。
その部屋の本当の主を、唯史は考えないようにしていた、大切なものは今腕の中にいる光紀自身だ。
まだ固く結ばれたその唇を唯史は舌でなぞる、分け入るように入ると、光紀はそれを受け入れてくれた。懸命に差し出されている光紀の舌は緊張の為か少し硬く、その辿々しさが、却って唯史を煽る。綺麗に整った歯列を内側から嘗めると光紀の身体から緊張が抜けていった。そうして柔らかくなった舌を思う様に嬲(なぶ)る。
「ん、・・うぅ。」
飲み込めなかった唾液が唇の端から首筋に伝う。取り敢えずの解放を与えると光紀は肩で息をしていた、年上の彼女がいるとは思えないその幼さも男にとっては欲情の対象にしかならない。息が整う間も待てずにもう一度深く口付けた。柔らかな口腔内は居心地が良く、それが愛する人のものだと思うと言い様のない感動が胸に涌く。
キスが、こんなに気持ちいいなんて今まで知らなかった。
流れ落ちた唾液を拭うように、鎖骨から唇までを辿るとピクリと光紀の身体が反応する。それから瞼に、頬に沢山のキスを贈った、滑らかな肌は吸い付くようにしっとりしていて、それでいて瑞々しい弾力を持っている。
そうやって唯史が遊んでいると、不意に電気が消えた、見ると光紀の手がベッドサイドのリモコンに伸びている。
「いいの?」
尋ねると、光紀は頷く代わりに自らのシャツに手を伸ばした。しかし、手が震えてしまってうまくボタンを外せない。無理もなかった、男に抱かれるのは初めてなのだから。
「何もしなくていいよ。」
唯史は囁いて、片手で器用にシャツのボタンを外していく。空いている手を裾から差し込んで背中のラインを辿ると、光紀はもう身体を支えられなくなってベッドに手を付いた。そのまま押し倒して処女雪のような肌にキスを落とす。
「や、」
滑らかな肌を味わう舌が、小さな突起に触れた所で声が上がった。
「ここ、感じる?」
唯史の問いかけに答えてくれるのは唇ではなくツン、と尖っていく小さな肉芽。唇で強めにはむと快感に耐えるかのようにシーツを握る手がュくなった。
「我慢するなよ。」
胸の突起は左手に任せて、唯史は光紀の手をシーツから剥がす。腕に浮き出た筋肉のラインを舌で辿って、無理矢理開かせた指の間をねっとりと舐め上げると、
「あぁ、・・・ぃやっ」
甘い声と共に光紀が腕を引き寄せる。その勢いに乗って唯史はまだ濡れていない方の突起に舌を寄せた、口と指とで両の乳首を嬲られて光紀の全身から力が抜けていく。
「いい子だな。」
「ァっ」
優しく囁いてから不意打ちでそこに歯を当てると涙が頬を流れた。しかしそれが誘うのは憐憫ではなく更なる欲望だ。もっと色んな顔が見たくて、脇腹をキュウッと吸ってみた。
「んーー。」
くぐもった声。気を紛らわそうと、首を振っているのが見なくても分かる。声を殺そうと枕を噛んでいる初々しさが可愛くて、苛めてみたくなった。
「んんっぅ。・・・・うぅ。」
おなかの真ん中にある小さな窪みに舌を割り込ませると光紀の体が逃げを打つ。それを追いかけるように舌でグイグイと刺激すると、光紀の分身が元気になるのが分かった。
「こんな所もそんなに感じるの。」
そう言うと、光紀は顔を真っ赤にしてきつく目を閉じる。
「それじゃああキスできないよ。」
声を殺す為に噛んでいた枕を光紀から取り上げて、もう一度キス。為すがままに力が抜けている下肢の間に身体を割り込ませる。
「や、」
布越しに触れると反応しかけたそれはますます元気になった、感じてくれている事が嬉しくて、もっとちゃんと触れたくて、トランクスの中へ、直接手を入れる。他人のものに触れるのは初めてだったが全然嫌じゃあない。それよりも光紀の中心部に直接触れているという事実が唯史を興奮させた。
「ああ、・・やだ。い、・・・・・あ。」
握り込んで、扱いて、爪先で先端に触れると光紀自身は痛い位に張りつめてしまう。
「や、・・・離して、もう。」
絶頂が近いのを感じて唯史は光紀のズボンを下ろす。剥き出しのそこは、ピンクがかっていて可愛いとすら思えてしまう。今更だが本格的に自分はこの同性に惚れているようだ。何もかもが愛しくて仕方がない。
「好きだ、雨下。」
「アァッ。」
一際強く擦って囁くと光紀は唯史の手の中に欲望を放った。
その弛緩している身体から完全に衣服を取り去り、唯史は自分も身に付けているものを脱ぎ捨てる。感極まったように快感に溺れる光紀の姿など見せられてしまったら。唯史だって冷静でいられるわけがない、もうすでに十分に育った分身は光紀に包まれたいという欲求でいっぱいだった。
ベッドサイド気怠げに四肢を投げ出している光紀の姿は何とも色っぽい。そのまだ力の抜けている両足の間に唯史は身を割り込ませた。そしてその両足の間を指ですぅぅっと辿る。唯史のやろうとしている事に気が付いて、光紀が身を竦ませた。それから自分のあられもない格好に気が付いて慌てて足を閉じようとする。誤解だとは分かっているのだがそうする光紀が足でしがみついてくれているようで唯史は余計に煽られてしまった。
そうなると余計に止まれる筈など無くて、その小さな蕾に、唯史はそっと指を差し込んでみる。挿入は指についていた光紀の精のおかげでなんとか出来る、しかし中の狭さは想像以上だった。
本当にこんな所に入るのだろうか。
しかしここまで来て一つにならないでいる事など出来そうになかった。
「や、痛ぃ。」
ゆっくりと中を探ると光紀はそう言う、しかし逃げはしなかった。熱い内壁は、しかしいつもと勝手が違う、潤いが足りないからだ。
唯史は一度指を抜いて、自らの唾液で湿らせようとした。その手を、身を起こした光紀がそっと両手で包む。一瞬拒絶されるのかと思ったらそれは違った。
光紀はそこに唇を寄せたのだ、唯史の顔をじっと見ながらそこに舌をはわせる。目線の高さから上目使いになった光紀の瞳は黒曜石のように潤んでいて、それだけでもグッと来てしまって分身が大きくなるのを感じた。だから
「ん、う・・・・ううぅ。」
余計にその拙い舌使いがじれったくて、つい指を使って口腔を犯してしまう。暖かく柔らかな内側を蹂躙すると最高の手触りを感じた。
十分濡れた所でもう一度そこに指を寄せた、今度はさっきよりもスムーズにはいる。
「や、いっ、つぅッ。」
光紀は苦痛に耐えるように表情を歪めていた、シーツにも涙の痕が出来ている。罪悪感はしかし欲望を止める事など出来ない。内側の粘膜を撫でて揉みほぐすようにそこを探った。次第に柔らかくなってきたのを見据えて指を増やした。この辺りに性感帯があるはずだと、深くまで内壁を探る。そして、
「ヤダ、ヤダ。そこ、やぁあ。」
後ろで感じてしまった事が余程ショックだったのだろう、今までになく強い拒絶が光紀の口から漏れる。しかしその声は甘くそこが確かにイイのだと唯史にに教えていた。ゾクゾクする程艶めかしい喘ぎ声をもっと聞きたくて、唯史はそこを攻める。すると光紀自身が硬度を取り戻し、快感が力を除いてくれたそこはやっと柔らかくなった。
「そろそろ。ね。」
恐らく理解できないだろうとは思いながらも一応声をかけて、唯史は光紀の蕾に自身を宛った。
「や、痛、い。」
先だけでも酷くきつい。でも、止められなかった。
「大丈夫だから、力、抜いて。」
囁きながら前を弄って後ろの痛みから注意をそらせる。付け根にある二つの果実を優しく揉んで先端を摘(つま)むように刺激すると、そこは少しずつ頭をもたげてくる。そうすると後ろも緩んでくる。そこで、一気に貫いた。
狭い蕾に、それは一杯一杯になって詰まっている感じだ。痛いけれど深く、一番奥まで繋がっているのを感じる。キスをして、
「愛してる。」
囁きは光紀に届いた。
「俺、も。」
弱々しい声だけれど、光紀は微笑んでいた。愛おしかった。繋がったままその気持ちを込めて光紀にキスと愛撫を施す。固くなっていった体がそうするととろけていく。
もう、痛みじゃなかった。光紀自身も快感に震えて上を向いている。
熱い粘膜に覆われる確かな快感、でもそれだけでは物足りなくなってきて。腰を動かすと内側と擦れて更なる快感がある。
「ァ、ああ。」
指での愛撫の時のように、光紀もその事に感じ始める。
夢中になってお互いの快感を追って。
「好きだ、愛してる。」