STRAY CAT 5
瑛の家に着てから三日が過ぎた。
当初、知らないことの多かった俺の家政婦としての仕事もだいぶ慣れてきて、瑛の風邪も今ではほとんど治ってる。
『お前のおかげだな。』
なんて、可愛い気のあるセリフを言われることはなかったけど、
それでも無言で通じ合える瞬間が、・・・好きだ。
瑛は最低限のことしか話さない。
でも、ちらりと時計を見る目が薬の時間とか、食事の時間を教えてくれて。
ベッドから起き上がれないこいつを助ける度に、俺が居なくちゃ駄目なんだってなんだか嬉しくて。
昼寝の時間が減ったって言うのに全然苦じゃない。
お粥も、もう炊飯器で自分で作れるようになった、掃除機はうるさいからまだ苦手だけど洗濯機と乾燥機は使えるようになったし。
そう考えると、俺って結構優秀かもしれない。
なんて、いい気になってたんだけど。
「風呂?」
初めて頼まれた用事に、俺は慌てた。
そもそも猫には風呂に入るという習慣はない、始めてこの家に来た日に強引に入れられたけど病人を、あんな風にごしごししていいのかは謎だ。
俺は悩んだ。
こんな事ならスーパーで会った親切なおばさんに聞いておけばよかった。
と、思うけど後の祭り。
今ここに居るのは瑛と俺だけで、俺はすぐにでも瑛を風呂に入れなければならない。
悩んだ、結果。
「俺、どうすればいい?」
あぁ、駄目だ、絶対不安な気持ちが顔に出てる。なんだか気恥ずかしくて、頭に血が上るのを感じた。瑛は一瞬だけ眉をひそめて、でも、
「湯船に湯を張って、お前も一緒に入って背中を流せばいい。」
馬鹿にしないで、教えてくれた。
だから俺はすぐに言う通りにして、湯船が満タンになったら瑛を呼ぶ。
脱衣所に現れた瑛は相変わらず無表情だったけど、雰囲気から待ちくたびれていたのが分かった。
そして俺の前で躊躇いもなく服を脱ぐ。
瑛の裸なんて、着替えを手伝ったときに見ていたはずなのに。
風呂から漏れてくる水の匂いの所為だろうか、なぜかドキドキした。
同性相手に、ありえない。
俺は冷静になろうと瑛に背中を向けて。
「さっさとしろ。」
怒られる・・・・までは良かったんだ。けど、
「って、え、あの。」
首根っこをつかまれて、そのまま乱暴に服が、脱がされる。抗議の目で睨めば。
「服が濡れたら洗濯するのはお前だぞ。面倒だろ。」
当然のように言われて。いや、それは確かにそうなんだけど。
前に一緒に入ったとき、瑛は服を着ていた。
背中を流すだけで、全部脱ぐ必要があるんだろうか?
というか、正直恥ずかしいんだ。瑛の前で裸になるのが。
だって、瑛の体は細身に見えるくせにちゃんと筋肉質で、男らしくて。それに比べたらまだ成長期にある俺の体はどこか貧相だ。
確かに野良だったころはろくなものを食べていなかったんだからしょうがないけど。身長がそこまで変わらない分、悔しくて。
けど瑛はそんな俺の男心なんて分かってもいない様子で先を促す。そして、
「金は、もらってるんだろう。」
そう言われたら、逆らえなかった。
嘘でも、その契約が無かったら俺はここに居られないから。自棄になって一気に服を脱ぎ捨てると。
「色気のない奴だな。」
そんなもんあってたまるか。俺は腹が立ってきて、
「早くしろよ。」
こうなったらさっさと終わらせるだけだ、と浴室へ向かうガラス戸を開ける。それからスポンジを泡立てて瑛の背中を流したところまでは良かったんだけど。
「前も、だ、ちゃんと洗え。」
お前、さっきは背中を流すために入れって、言わなかったか?
正直突っ込みたい、思いっきり突っ込みたい。
けれど、ああ、どうして俺こいつと今主従関係なんだろう。
従うより他なくて、椅子に座った瑛の正面、床に座り込んでそっと手を伸ばす。そうすると、嫌でも目が、その部分に行ってしまって。
考えるな、俺!
そう思うけど止められない。
ここも、洗うんだろうか。
ああ馬鹿、俺の馬鹿、何考えてる。
というか瑛、お前何考えてるんだ、恥ずかしくないのか。
人前に、こんなもん差し出して。いや、確かに恥ずかしくはないサイズだけど。
なんて、考えているうちに俺は瑛の他の部分を洗い終えてしまった。
そこは、・・・・ほら、うん、他人が触れるようなところじゃないだろう。
と、勝手に決め付けて
「終わったぞ。」
俺は言うんだけど、帰ってきたのは笑み一つない顔だった。
「肝心なところが、残ってるだろう。」
やっぱり、やっぱりそうなのか。
嫌だ、やりたくない。けどこれが家政婦の仕事なのだと言われたら俺はやるしかない。
葛藤が胸を締める、その間に。
「あっ」
手の中には、熱い棒状のもの。
これ、これ、これっ
俺はかぁっと紅くなってしまった。
瑛が、勝手に俺の手をそこにやったのだ、スポンジは、床に落ちてる。
素手って、そんな。
伝わってくる、瑛の熱、ドクドクしてるの、どっちの脈だろう。
「早く、しろ。」
感じているのか、少し掠れた声。その声に操られるように、俺は根元から先まで瑛自身にソープの泡をこすり付けていく。
俺、何やってるんだろう、こんな、こと。
付け根にあるものから先端の括れまで、丁寧に洗っていくとソレは次第に形を変えて。
熱く、張り詰める。
俺も瑛も雄なのに。
変な方向に流れてしまいそうな雰囲気に俺は急いでシャワーで流した。