UP SIDE DOWN
一人ベッドルームで待ちながら啓一は膝の上に置いた手を握り締めた、柿崎は今シャワーを浴びている。いつもとは逆の順序、その時を待つ女の気持ちなんて一生知りたくなかったのに。
「落ち着け、俺。生娘じゃないんだし」
ドアの向こうから聞こえる衣擦れの音に心臓が跳ねる。
「逃げなかったようだな」
風呂上りの柿崎は漆黒の髪を首筋に張り付かせて、その美貌を更に際立たせている。バスローブの羽織っただけと言ういかにもな格好も全く違和感がなかった。同性の目から見ても手馴れた仕草で近づいてくる様は見惚れてしまいそうで、
「あんたと違って臆病風に吹かれる趣味はないからな」
劣等感を打ち消すために敢えて強気な態度をとった。
「そういう口はすぐ利けなくしてやる」
間近に近づいた柿崎の顔が、にやりと不敵に微笑む。かっとなって言い返そうとした瞬間、その顎をとられて、
「え・・・んぐ」
開いた口の内側を何本もの長い指が乱暴に口腔を犯した。
「ん・・ふぐ。ぅん」
舌の裏の柔らかいところ指で両側から擦られて、あふれ出した唾液が唇の端から零れる。それに引き換え表情もなく自分を見下ろす柿崎の顔はあまりに綺麗で、惨めさと息苦しさに眦に涙が滲む。その上、
「ッ」
指を増やされれば、限界まで開かされた顎の関節が外れそうなほど痛い。
「もっと舌を使え、淫らに、浅ましく」
男の声が傲然とそう命じてくる。俺の唇なんて性欲の排泄場所なのだと見せ付けてくる。
気持ちわる苦しさに涙が頬を伝った、それなのに
「泣くほど好きなのか」
嘲るような声、羞恥に身体が熱くなるのが分かった、何でこんな目に会うのか仕返しに指に噛み付けば。
「ぐっ、痛ぅ」
一瞬何が起きたのかわからなかった、頭がくらくらする。
「歯は立てるな、言っただろう」
その言葉に、柿崎が自分の事を殴ったのだと遅ればせながら理解した。
「てめぇ、何す・・・」
暴力は許していないと抗議しようとすればまた一発。
「勘違いするな、これは調教だ」
だから言葉の分からない動物にするように、鞭をくれるのだと男は言う。男に身体を売るという、啓一の交わした契約はそう言うものだと言い切る。そして、唾液で濡れた手のひらを啓一の顔にこすり付けてきた。
自分の顔から細い唾液の糸が柿崎の指に繋がっている、ぬるりと流れる液体の感覚は啓一には未知のもので。
「ゃ・・・汚」
普通のセックスとは違う変態じみた行為に抗議の声を上げるが、
「お前のだろう」
何もなかったような顔をして柿崎は啓一の着衣を乱していく、そして、
「あっ」
胸の突起を摘まれた瞬間、啓一の身体が跳ねた。濡れた指で押し込まれればそこが硬くしこっているのが嫌でもわかる、ジンジンと痺れが脳と身体の中心に伝わってきて。
「いい乳首だ、色も感度も申し分ない」
女扱いされて羞恥に体が熱くなれば余計に快感が強くなった。
「ゃ、何」
「女と同じ場所がお前の性感帯なんだよ」
耳から注ぎ込まれる低い声。
「な・・わけ・・・はぁッ」
必死の反論はしかし熱いところを触れる手によって止められる。
「元気な坊やだ」
柿崎の言うとおり、啓一の中心部は既に形を変え始めていた。
口と胸を弄られただけだというのに、信じられない。
「あ、あ」
脇腹、うなじ。
柿崎の風呂上りの熱い手が啓一の身体を弄りまわしてくる。
その程度で感じてしまっているなんて認めたくないのに、身体が熱くて。
「本当は掘られまくってる淫売なんじゃないのか」
「ゃ・・・違う」
呆れたような柿崎の声に抗いたいのに、身体が勝手に反応していく。耳たぶを噛まれて快感に耐えようと目を瞑れば両胸を同時につねられた。
「ちゃんと見ろ、淫らなお前を」
先端を爪で押し込まれて痛いほどに擦られた。
「ぃや・・あ」
思わず視線を送れば底は赤みを増して尖っている。まるで自分の身体ではないみたいだ、しかし柿崎の手が甘くそこを引っ張れば伝わってくる感覚は確かに自分のもので。
「ぁ・・ぅん」
熱い、欲しい。
本能的な性欲が更なる快感を求めて啓一の体を突き動かす。下着の中の自らのものへと手を伸ばせば、
「今日はそういうプレイじゃない」
柿崎の手が力の抜けた啓一の両腕を拘束してバスローブの紐で縛り上げた。
「く、っそ」
目の前では、自分が取り出した生でむき出しになった局部が形を変えて柿崎の前にさらされている。
「サイズは標準か」
「うるさい」
わかっては居てもはっきり言い切られると男の沽券に関わる。
「硬さは・・・どうだ?」
「ぁッ・・・触る・・んん」
機械的な刺激が、敏感になった身体に却って強く感じられる。