会いたくて、
翌日から俺は時間が空く限り一年の教室を訪ねることにした。こうなったら俺の気持ちなんて関係ない、あいつにバスケを返してやらなきゃ。と、早速意気込んで朝から壱年の教室に向かったのだが、
「柿坂、大野来てないのか」
目当ての人物が見当たらないので取りあえず柿坂に声をかける。すると、
「それが休みみたいなんです、今日は部活があるって言うのに」
不満そうな顔、それは俺も同じだ。うまい奴とバスケをする時間が減るのはそれだけでも十分勿体無い。とはいえ真面目なあいつがサボるとは思えない、具合でも悪いんだろうか。
始めたばかりの一人暮らしで身体を壊すとかなり悲惨だ、経験からそれを分かっている俺はすぐにでも大野の元に駆けつけたい。
ッて、どうして俺は大野が絡むとそんなに過保護なんだよ!
まだ朝だし、ただの遅刻ってこともあるだろ。
「そっか、じゃあいいや」
内心の焦りを誤魔化すようにうそ臭い笑顔で俺は告げるとすぐに教室を後にした。部活では話しづらいことだけど別に今日どうしてもというわけじゃない、明日また繰ればいい、そう、思っていたのに。
次の日もその次の日も大野は学校に来なかった。
そして3日目、とうとう俺の我慢は現愛を越えた。初対面の時に聞いていた電話番号をここぞとばかりに利用してしまう。携帯電話を表す音がなった後はコール音が7回続いて、
「もしもし、バスケ部の・・・」
『ただいま、電話にでる事が出来ません、メッセージを』
くそ、留守電だ。
学校を休んでるなら家に居るんだろうけど、寝てるんだろうか。出来れば声を聞きたかったから、俺は伝言を残さずに電話を切った。また後でかけなおそう。あんまりしつこくしても悪いからな。
と、紳士的に掛けなおしていたというのに。昼休みにも放課後にもでない。
三度目に。
「大丈夫か、もし具合が悪いようだったら言えよ、力になるからな」
それだけ、メッセージを残した。
その夜。
『もしもし・・・』
久しぶりに聞く大野の声は思いの外元気だった。
「堀口だ、大野か」
「はい、昼間は電話に出られなくてすいません、先輩のも心配をかけてしまったようで」
完全に恐縮しきった声に、受話器の無効で頭を下げている大野が見えるようだ。それがなんとなくかわいくて、それだけで俺の気持ちは勝手に浮上してしまう。
「いや、それより大丈夫か」
だから冷静な声でそう聞く事ができた、あんまり大げさに心配したら不振柄れるからな。そして、
『はい、別に身体はどうって事ないので明日には学校に行けます』
「そうか」
俺は胸をなで下ろす、でも身体が大丈夫ならどうして休んでいたんだ。俺は大野の『平気』がどうしても信じられなくて、つい、言ってしまった。
「お前、家どこだ、見舞いに行ってやる」
「そんな。いいですよ本当に」
返ってきたのは慌てた声。男の一人所帯だから散らかっているとでも言うんだろうか、でも俺はそんなことは気にしないし。
「遠慮するな、一人じゃ飯もうまくないだろ」
そう、長い間人と会わないとそれだけで気が滅入るんだ。
だから強引にでもあって、馴れない土地であってもお前は一人じゃないんだって教えてやりたかった。
その気持ちが伝わったのか。
「じゃあ、その、お願いします」
小さい声で大野がそう言って、俺は電話を切る。
そしてその瞬間青ざめた。
大野の家で二人きりで俺は何もしないでいられるんだろうか。
病人っていう事は確実にパジャマなはずで、いや、大丈夫相手は男なんだ。大野の男らしい(と思われる)部屋を見ればきっとそんな気もなくなるに違いない。
だから俺は大急ぎで見舞いの荷物をまとめてバイクを走らせた。
十分後
パークヒルズと書かれたマンションの前で俺は立ちすくんでいた
これ、窓の間隔といい外装といいどう見ても家族用マンションじゃないか。
空き部屋ありの広告にも2LDKや3LDKの広い部屋が目立つ。学生が一人暮らししている家には見えなかった。
違っていたらと思うとオートロックのインターフォンに、教えてもらった部屋番号を打ち込むのも躊躇われる。
心配になって携帯で聞くと、
『すぐ迎えに行きますから』
その小綺麗なマンションから見慣れた姿がでてきた。
ジーンズにTシャツ、ラフな服装は大野が着ていると可愛く見えてしまうのだから俺も重症だ
「すみません、わざわざ。」
大野はぱたぱたと走ってくると手みやげの弁当とタッパーを受け取った。つい渡してしまって、
何病み上がりに荷物もたせてるんだよ、俺。
早速自己嫌悪に陥る。
エレベーターが目指すのは12階、上から2番目、廊下に出ると勿論いい眺望だった。