会いたくて、
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・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
突然すぎる告白に、俺は全く付いていけない。
いくらなんでも俺にとって都合が良すぎる、空耳だ、聞き間違いに違いない。完全に頭がフリーズして何も言えない俺に、
しかし大野は事実を信じられない俺にさらに信じられない言葉を投げかけてくる
「高校生の頃からずっと、好きでした」
「どうして」
ますますありえない、だって高校時代といえば俺はお前の顔はおろか存在も知らなかったんだぞ。
混乱する俺に大野はまるで過ぎ去ってしまった過去をその目にしているかのように語り始めた。
「放課後のグラウンド、凄くひたむきですぐに伸びた後姿がありました。速いわけでもうまいわけでもなかったけど、賢明さが、眩しかった」
それって褒めてない。でも確かに大野のいうとおり、あの頃俺は自分の限界に薄々気付いていて、でも諦められなくてガムシャラだった。
俺も若かったんだな。
「顔も知らないけど、いつも勇気を貰ってた」
静かにそう言って、大野は真直ぐに俺を見ていた。でも、
「たった、それだけで」
恋をしたと言うのだろうか、俄かには信じられない。だって同性は憧れの対象にはなっても恋愛の対象にはならない。そんな俺の問に大野は小さく笑って首を振る。
「五月ごろ先輩中上に言ったでしょう? 身長なんて関係ない目差せば夢は夢じゃないって」
中条、確かに陸上部に入るか迷ってたあいつに俺はそう言った、あいつ大野と友達だったのか。
「俺、あの台詞のおかげでバスケやめなかったんです、先輩が俺に勇気とバスケをくれた」
「そんな、大げさな」
俺はちょっと思った事を言っただけでそんなすごい事なんて何もないのに、かえって照れてしまう。
そしてふと思い出す、前に聞いた大野がずっとグラウンドを見ていたって言う話。あれは、俺を見てたって言うのか。
信じられない、でも大野は俺をだますような奴じゃない。
「ずっと、レギュラーになったら告白しようと思ってたんです。でも、何も言えないまま卒業する先輩を見送って」
当時の事を思い出しているのか、大野の目が少しだけ潤んでる。それがやるせなくて、
「大野」
抱きしめたくて手を差し伸べかけた瞬間、
「でもその時に事件は起こった。俺は薬剤師になるっていう夢を追う機会を得て、ここに来た」
にっこりと、思わず見惚れてしまいそうなくらい全開の笑顔。八重歯が見えると実年齢以上に幼く見える、なんでそつなくこなしているように見えるけど大野だってまだ二十そこらのガキなんだ。
でも、く。
どうすればいいんだよ、この差し出しかけた中途半端な手は。
「そうか」
俺はバツの悪さを隠すように相槌を打ってこっそりと自分の手を戻す。そんな俺の動揺に気づかないのか大野はまだ必死に言葉を続ける
「見てるだけでよかったんです、先輩を見てるだけで俺は勇気をもらえた。それだけでいいって思ってたのに」
あえて言葉を止める大野、俺にもようやく話が見えてきた。
「それで、俺の所為ってことか」
俺がバスケ部に勧誘して、実力があるなら試合に出ろって言って、こいつはレギュラーの座を手に入れたんだ。だから、
大野は頷いて、またその言葉を口にする。
「好きです、先輩のことだ」
もう、疑う必要はなかった。
「俺も、好きだ」
自分でも不思議なくらい素直に、その言葉が出る。けれどその途端大野は立ち上がって眉を吊り上げて、
「冗談じゃないんです、俺は恋愛感情で好きなんです、友情でも尊敬でもなくて先輩が」
必死に言い募るから、俺は自分の体を示してはっきりと言い切ってやった。
「冗談で、欲情なんてしない」
バッと音を立てて大野がしりもちをつく。
「そそそ、そ」
顔なんて真っ赤だ。でも、しょうがないだろ、ずっと好きだ欲しいって思ってた相手にこんな可愛い事を言われて、その気にならなかったら男じゃない。
「愛してる」
俺は愛おしい体を抱きしめた、柔らかい匂いが鼻腔をくすぐる。
「俺、男ですよ」
「知ってる」
「気持ち悪くないんですか」
「そんな事言ったら俺も同罪だろう」
疑り深い相手に思いを伝えたくて唇を寄せた。髪に、それから顔をあお向けて唇に、触れるだけの優しいキスを落とす。それでも、
「同情なんてしないで下さい」
四年越しの片思いは恋を諦めていて信じてくれない。
「同情じゃない」
言葉を重ねても、
「じゃあ勘違いだ、先輩みたいに素敵な人が男の俺に惚れるわけない」
かたくなに信じてくれない大野、それはこいつがどれだ幸せに臆病になっているのかを表しているようで
「怯えなくていい、本当に好きだ」
精一杯の思いをこめれば
「本当ですか」
小さな声で、不安そうに尋ねてくる
「本当だ」
「じゃあ」
俺にしがみついて大野の顔が隠れた。
震える唇に皆まで言わせず、俺はただ腕に力をこめる、そして
「お前が欲しい、いいか」
小さな顔が縦に揺れるのが分かって俺達はそのままホテルのシングルベッドに倒れこんだ。